大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和45年(ネ)816号 判決 1971年2月01日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し原判決添付目録(二)記載の建物部分を収去し、同目録(一)記載の土地を明渡せ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上、法律上の陳述、証拠関係は次に付加するほか、原審原告福入商事株式会社に関する部分を除く原判決の事実欄記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決原本一〇枚目裏九行目に「慢然」とあるは「漫然」の誤記であるから訂正する。)。

(控訴人)

一、原判決添付目録(一)の本件土地の所在地は杉並区正保町四五番二となつていたところ、昭和三八年九月一日現在のとおりの表示となつたものである。

二、原判決添付目録(二)の本件建物の所在地は杉並区正保町四五番地であつたところ、昭和三八年九月一日杉並区井草一丁目四五番地と変更されたものである。

三、原審原告福入商事株式会社は昭和四三年六月五日本件土地の持分権を放棄したので、控訴人がその単独所有者となり昭和四三年一二月八日付で控訴人のため持分の移転登記を経由したものである。

(被控訴人)

控訴人の右主張事実を認める。

(証拠関係)(省略)

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求を失当として排斥すべきものと判断するが、その理由は、次に訂正、付加するほか原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

一、原判決原本一一枚目表九行目冒頭から一〇行目「ること、」までを「控訴人が本件土地を所有していること、」と、同裏一〇行目に「原告らが、」とあるのと「控訴人および福入商事株式会社が」と、同一四枚目表四行目に「原告ら」とあるのを「控訴人」と各訂正する。

二、原判決原本一二枚目表一行目の「取得したこと、」とある次に「原審原告福入商事株式会社が昭和四三年六月五日本件土地の持分権を放棄した結果、控訴人がその単独所有者となつたこと」と挿入する。

三、原本の存在と成立にいずれも争いのない甲第二号証の一ないし三、同第三ないし第五号証の各一、二によると東京地方裁判所昭和三七年(ヌ)第三二九号の本件土地の強制競売手続において、競売物件である本件土地について賃貸借関係なしとして競売期日の公告がされていることを認めることができるけれども、たとえ、右公告に賃借権の記載を欠いたとしても、これが競売手続における異議の事由となることのあるのは格別、また、この公告に基づく競売手続により控訴人が取得した(福入商事株式会社と共同して)本件土地が右のように被控訴人の賃借権によつてその利用の制限を受け不測の損害を被るとしても、控訴人としては被控訴人を相手方として契約の解除をし、あるいは代金の減額を請求する余地のあるのは格別、本判決で引用する原判決の理由説示のように被控訴人が本件建物の敷地である本件土地について控訴人に対抗できる賃借権を有することの妨げとなるものではない。

よつて、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用については民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例